教育現場にも中核派の脅威 「教職員に組織拡大を図っている」
産経新聞 2012年9月2日(日)7時55分配信
■アジトの名義貸し 「協力者」に仕立てられた中学教諭
滋賀県の市立中学の40代男性教諭が過激派の中核派にマンションの賃貸借契約で名義を貸し、非公然アジト設置に協力していたことが1日、捜査関係者への取材で分かった。アジトの捜査をしていた警視庁公安部の調べに名義貸しを認めた。教諭は、教科書偏向問題に取り組む「新しい歴史教科書をつくる会」に反対する団体で中核派と接点を持ち、「協力者」に仕立て上げられていた。教科書や歴史認識問題で団体運動する教職員に、過激な暴力集団が浸透する実態が浮かぶ。
▼「選挙事務所にしたい」
捜査関係者によると、男性教諭は平成17年7月、東京都小金井市にあるマンション一室の賃貸借契約で、中核派の活動家の男(40)に名義を貸していた。部屋は、男が潜伏する非公然アジトに使われていたが、男性教諭は自分名義の銀行口座を、電気料金の支払いに使わせたりしていた。
男性教諭は「つくる会」に反対する団体で、中核派の女(64)と知り合い、名義貸しを持ちかけられたという。部屋は23年6月に賃貸借契約が終わっていたが、公安部は今年3月に立川市で別の非公然アジトを家宅捜索した際、押収資料の分析などから小金井市内にもアジトがあったことを確認した。
男性教諭は公安部の調べに、名義貸しを認めたが、「『石原(慎太郎・東京都知事の)都政に反対するため、都議選、区議選の選挙事務所にしたい』と頼まれた。中核派とは知らなかった」と説明したという。
名義貸しは詐欺容疑に当たる可能性もあるが、すでに賃貸借契約が終わっていたことなどから、公安部は男性教諭の立件を見送った。アジトに潜伏していた男は、運転免許証の住所に潜伏先を記載しなかった免状不実記載容疑で逮捕した。
▼橋下氏への抗議活動でも
中核派は、今年3月に平和運動で接触した別の滋賀県内の小学教諭にも、アジトの名義貸しをさせていたことも明らかになっている。公安関係者は「教職員に組織拡大を図っている」と分析する。
公安関係者によると、「つくる会」メンバーが執筆の中心になった教科書の採択では、東京都杉並区で中核派メンバーが加わる団体が反対署名に取り組んでいたことが、公安部に確認されている。
学校での国旗・国歌斉唱に反対する運動にも影はちらつく。「誰にも、立たない、歌わない自由があります」。今春の卒業式シーズンには都立高校の13校で、25人の活動家がビラ配布を行うのが確認された。橋下徹大阪市長らが進める教育改革へも抗議行動を中核派の活動家があおるのも確認されているという。公安関係者は「教育現場は見えない過激派の脅威にさらされている」と指摘する。
【用語解説】中核派
社会主義、共産主義革命を目指して暴力的な活動を行ってきた過激派の一つで、正式名称は「革命的共産主義者同盟全国委員会」。警察当局は「極左暴力集団」として実態解明に努めている。4700人程度の活動家がいるという分析もあり、過激派では、革マル派に次いで2番目の規模。過去に多くの活動家が殺人事件などで逮捕されているが、一方で社会運動など合法的な手段も取る。東京都江戸川区のビル「前進社」を拠点とする一方、正体を隠して秘密裏に活動する非公然アジトが摘発されるケースもある。